秋が深まり、夏時間が終わるとノルウェーでは長く厳しい冬が始まります。白夜の下でのフィヨルドツアーや人気のベリー摘みなど夏のノルウェーも素敵ですが、やはり北国の暮らしを満喫できる季節は何と言っても冬。間接照明が施された部屋で蝋燭を灯し、家族や仲間たちと語らう時間はかけがえのないものです。
そして街の女性たちがダークなロングコートにカラフルな帽子と手袋でお洒落を始めると、1年で最も楽しいクリスマスの準備が始まります。合唱団も吹奏楽団も子どもたちのバンドも学校の授業もクリスマス一色。この時期、多くの合唱団では教会でのクリスマスコンサートに向け、本格的な練習が始まります。もちろん私の専門である音楽療法も例外ではありません。
クリスティーネは重い知的障害をもつ女の子。クリスマスソング「ひとりの嬰児がベツレヘムに生まれた」が大好きです。しかし彼女が歌うことのできるのは、最後に2回繰り返される「ハレルヤ」の「ルヤ」だけ。私は7番まであるこの歌を毎週、クリスティーネとうたいました。「ルヤ」の部分がくるまでの期待感に満ちた彼女の表情と「ルヤ」をうたう時の満足そうな笑顔を今でも忘れることができません。
ノルウェーの冬には人と音楽との結びつきを深くしてくれる静けさと温かさがあります。
(井上 勢津)
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